子どもの誕生日に一緒にケーキを作ることにした。はじめはどの店でケーキを買おうかと悩んだが、せっかくの機会なのでやったことのない経験をさせてみようと思い立った。子どもと一緒に作るどころか、自分でホールケーキを作ること自体が初めてだ。
わが家にはふるいも泡立て器もないけれど、スーパーには二層に切られたスポンジケーキもすぐ絞って使えるホイップクリームも売られている。ありがたい世の中である。プレーンのスポンジと、ベーシックな味とチョコ味の2種類のホイップクリームを買い物かごに入れる。
「ケーキに何のフルーツを乗せたい?」と子どもに尋ねる。旬だしいちごになるだろうかと想像していたら「みかん」と返ってきた。思わず「いちご売ってるよ、いちごじゃなくていい?」と確認してしまう。押し付ける気はないが子どもの希望は半信半疑で聞いておかないと後で困ることもあるので念のため確認する。「いい」と言われ缶詰コーナーへ。缶に入ったものの他にパウチに入ったものもあり、量も様々でどれくらい必要かわからず悩む。近くにみかん以外の缶詰もあり、「他の果物も乗せる?」などと相談しながらしばし缶詰コーナーに留まる。小さめサイズのみかんの缶詰と、パウチに入った白桃とパインのシロップ漬けを選ぶ。皮ごと食べられる外国産の種なしぶどうもかごに入れてあるし、これだけあれば足りるだろう。
帰宅後、製作に取り掛かる。スポンジケーキの下の段にクリームを絞って塗る。それを繰り返す。缶やパウチから出したフルーツを並べる。上の段のスポンジを重ねる。またクリームを絞って塗る。今度は側面にも塗る。残りのフルーツを並べる。ここまでの行程をなるべく子ども主導で行うように心掛けた。おかげで白いクリームとチョコのクリームはごちゃまぜに塗られている。仕上げに飾りのクリームをちょんちょんと隙間に絞って完成。ここだけは大人のこだわりを出させてもらう。
最後に数字の形のろうそくを刺す。1から9までの形が全部入ったろうそくを買ったら、目を離した隙に子どもが自分の年齢以外の数字のろうそくもぶすぶすと刺していた。主役は彼なので好きにすればいい。
なんとなく、火をつけるのは年齢の数字だけにした。ハッピーバースデーの歌を歌って主役に火を吹き消してもらう。ケーキを6等分に切り分ける。フルーツの置き方が子ども任せで無秩序だったので、どの部分を食べたいか子どもに確認してから取り分ける。夫の遺影の前にもひとつ置く。初体験の味はうまくもまずくもない見事な既製品のおいしさだった。