2024/07/12

深夜のひそひそ

言葉に表すのが難しいけれど、なんか好きだなという感情はきっと誰にでもあるものだろう。
私にとってはファミレスがそれに当てはまる気がする。
子供の頃から頻繁に行っていたわけではないけれど、あそこにはさまざまな夢が詰まっていると思う。

幼少期の記憶があまりないけど、レジ横のおもちゃ売り場は何よりも魅力的に見えた。
高校、大学の頃は部活終わりに友達とドリンクバーでだらだら話したり課題をしたり、今思えばあの時間も青春の一部だった。
大人になってからは飲んだ帰りにソフトドリンクとポテトで遅くまで語り明かしたり、人の少ない深夜の店内の雰囲気を味わいながらひとりで読書したり。

生きていく上で絶対に必要なわけではないし、食事をするなら他に美味しいお店やカフェだってたくさんある。でも、時々無性に行きたくなる。そんな場所だと思う。


アメリカの映画を見ていると 食事をしたり、出会いのシーンとして24時間営業のダイナーがたびたび出てくる。
深夜や早朝のダイナーは人がまばらで従業員もなんだか気怠そう。
それなのにとても魅力的に見えるのはなぜなのだろう。
どこにでもあるようなBLTサンドとブレンドコーヒーだってとても美味しそうに見える。きっとあのコーヒーだってサーバーで温められ続けていたいつ抽出したのか分からないようなコーヒーだろう。
ドライブインシアターに憧れていたあの頃のように 未経験のことはより一層魅力的に感じられるのかもしれない。

働き方改革やコロナ禍を経て24時間営業のファミレスも随分減ったように感じる。
近所のファミレスも軒並み22時や23時閉店になってしまったが、私はもう一度深夜2時のファミレスの雰囲気を味わいたい。
多くの人が寝ている時間帯に何らかの理由があってそこにいることを選んだ人たちだけの空間。知らない人しかいないのになんだか心強かった。日常の中に潜む特別感がなんだか嬉しかった。

昔は良かっただなんて言いたくないけど、
「エモい」だなんて陳腐な言葉で簡単に片付けたくないけど、
あの頃の私には必要だった大事な時間がそこにはあった。
当時の気持ちにぴったりな言葉をまだ見つけられていない。

最近は眠れなくてもSNSを開けば夜更かしの人がいて心強い。
今の仕事に飽きたら私のような人間のための深夜の居場所を作りたい そんなことを考えたりした。

もうすぐ閉店の時間、注文したチョコサンデーはグラスの底ででろでろに溶けている。